2012/09/23

ZT LunchBox について思うことをつらつらと

現在使用しているギターアンプは ZT LunchBox という。
その小ささからは想像出来ない程の音量と音質、
その小ささ故の使い勝手の良さなどで、
以前から注目していた代物である。

その人にとってのギターアンプの良し悪しは、
「音」と「使い勝手」のバランスで決まるもので、
「音」の良さはまさにその人の好き嫌いの好みで決まるし、
「使い勝手」はその人のアンプの使い方で変わってくるし、
音と使い勝手どちらを優先させるかもその人の事情で変わってくる。
なので、自分にとって「いいアンプ」が、
必ずしも他の人にとってもいいアンプとは限らない。

そういうものだという感覚で捉えてもらうことを想定し、
私見ではあるが「音」と「使い勝手」の観点から、
このアンプについて思うことをつらつら書いてみる。
所有者の贔屓目も過分に入っていると思われるので悪しからず。


【音:全体の印象について】
芯の詰まったソリッドな音だというのが一番の印象。
それでいて硬質な感じ。パキッとした音だと感じる。
決して太い音ではないがソリッドさを感じるので気にならない。
むしろ自分の音作りは太くなる傾向があるので丁度いい。
音がバンと前に出てくる。それが音圧感という奴かな?
カーンという艶やかな中高域がとても気持ちが良い。
滑らかさも感じるのでいつまでも弾いていたくなる。
ジャズコーラスと似ているという話だが、
確かに音の出方は似ている。だがこちらはもっと硬い音だと思う。
どうにもならない程カチカチというわけではなく、
「使える硬さ」「気持ちの良い硬さ」の範囲を超えることはない。
良い意味で味付けがされていない。しかも反応も鋭く、
素直にギターの音をスパンと出してくると感じる。
弦の振動とか指の動きがそのまんま音に出るイメージ。
これがニュアンスを拾うとかイナタイという事だと思う。

【音:チューブアンプとの比較】
一部ネットの記事などでは「チューブアンプのような音」とあったりするが、
チューブアンプはもっと音が「緩い」というか、ボールがはずむ感じというか、
音に滑らかさがあると思う。そういう印象はこのアンプにあまり持てない。
ボンとはずむというよりパチンとはじける感じという方が感覚的に近い。
チューブアンプを散々弾き倒してきた人なら共通部分がわかるのかもしれしないが、
正直な話、自分にはわからなかった。 音の濃密さや立体感はある方だと思うが、
Fender Twin のクリーンが持つ濃密さや立体感を求めると多分ガッカリする。
ただし、このアンプに滑らかさが全く無いという訳ではない。
あくまでもチューブアンプと比べての話。艷やかで滑らかさも感じる。

【音:低音の薄さについて】
低音がスカスカだというのがネットの記事でよく言われているが、
6.5インチという本体備え付けスピーカーのサイズを考えれば出ている方だと思う。
ただ、スタジオにある Fender Twin や JC-120 と比べてしまうと、
低音の迫力はどうしても負けてしまうのは否めない。
また、床に置かないと低音が出ないという記事もあるがそれは正しくない。
出てないわけではなく、ちゃんと低音は出ているが、
音源が耳に近くなるため高音をより感じるようになっているだけのはず。
大きなスピーカーであればしっかり低音が出ている事を感じる。
マーシャルのキャビネットに繋げば豊かな低音が楽しめる。
特にメサ・ブギーのレクチファイアー用キャビネットにつないだ音は最高だった。
スタジオではキャビネットにつないで使う前提で、
自前のスピーカーケーブルも持ち歩くようになってしまった。
正直本体備え付けスピーカーのみで勝負しようとは思えない。
でもそれでいいじゃないかと思っている。補助スピーカー付きアンプヘッドで。

【音:ディストーションサウンドについて】
アンプ単体でも薄いディストーションは出せるのだがあまり好きではない。
線が細く、せっかくの艶やかな音が濁ってしまうように感じる。
好みもあるが、自分はガッツリと歪ませる方が好きなのでエフェクターに頼る。
元々アンプの歪よりもエフェクターの歪で音を作るつもりでいたので問題ない。
先にも書いたが、備え付けスピーカーはサイズのせいもありガッツリ歪ませるには難あり。
伸びのあるディストーションサウンドを得たいなら素直に12インチ4発を外付けしたい。

【使い勝手:音量について】
音量は十分にある。というよりこのサイズでは脅威の音量だと思う。
狭いスタジオなら単体でもドラムに負けない音量を稼げると感じる。
使い勝手の話にも通じるが、その上で自宅で使える音量にも出来る。
なので音量の振れ幅は非常に広いと言い切れる。
自宅使用の音量に難有りというネット記事も見たが、
それはおそらくエフェクトを併用した音作りをする際、
実使用時の音と差があまり出ないレベルの音量を得ようとしたのではないか。
自宅でそのレベルまで音量上げるのは確かに厳しいと思う。

【使い勝手:音作りについて】
トーンを調節するつまみが1コしか無い。
少なくて良いと思うか、細かな調節が効かないと嘆くかは人それぞれだが、
自分は音作りのベースとなるクリーンがしっかり出ればよかったので丁度いい。
ただ、トーンを絞っていくと当然ながら音が全体的に篭ったようになり途端に抜けが悪くなる。
だからアンプ側の高域を絞るというアプローチはオイシイ音域を潰してしまう事になるので間違いだ。
アンプはしっかり高域まで鳴らしてエフェクタ側で低域を必要な分だけ足してやる方が良さげだ。
さらに、ゲインの設定がトーンにも影響してくる性質があるようだ(どのアンプもそうか)。
トーンの設定はかなりシビアで、少し変えただけでガラっと音質が変わる。
トーンをいじる時は気をつけるべき。

【使い勝手:持ち運びについて】
サイズ的には何の問題も感じないほど小さい。ただ、重さはそれなりにあると感じる。
普段移動はクルマを使っている。それほど荷室が大きくないクルマなのでこのサイズは助かる。
もし演奏場所までクルマでなく公共の乗り物を使うなら持ち運びたくはない。
ただ、行った先に使えるアンプが無いことが確実に分かっていたとしたら持っていく。


総じて、このアンプは自分にとって音と使い勝手のバランスがよく、
これ以上の素晴らしいアンプは現時点で恐らく無いと思われる。
あくまでも「自分にとって」ではあるが。