2015/12/28

Tube Meister 18 サウンドセッティング等についてつらつらと

Tube Meister 18 を購入して1年が経った。
この1年ほぼ毎週末スタジオに持ち込んでは5時間近くぶっ続けで通電使用し、
気が向けば自宅で内蔵アッテネーターを 1w に設定して使用していた。
1年使い倒してみて、このアンプの勘所も大体掴んだ様に思う。

音の好みや感じ方は人それぞれで感覚的なものであり、
ましてや音作りなどはセオリーなど在って無いようなもの。
そういうものだという認識で捉えてもらうことを想定し、
サウンドセッティングを中心としたこのアンプの勘所について、
私見ではあるが思うことをつらつら書いてみる。
所有者の贔屓目も過分に入っていると思われるので悪しからず。

■1.全体の印象
本体が小さい。こんなもん?と思うほど小さい。このサイズ感がたまらなくイイ!
パワー管がEL84であることも影響するのか、カラリンという乾いた音ではない。
基本的にウェットなブリティッシュ・ヨーロピアンディストーションサウンドのアンプ。
AC30 や Orange に傾向は近いが、もっとモダンなサウンドに仕上がっていると思える。
そして音に独特な粘りと艷やかさがある。そこがとても気に入っている。
サウンドバリエーションが豊富な方ではないが、
アンプの構成がシンプルかつ基本をしっかり押さえたサウンドなので、
「ビシっと一発セッティングを出してもう変えない」
という自分のアンプの使い方に合っていてよい。
リードchのブーストONとOFFで音量差が激しいという意見があるが、
リードとリズムバッキングはこれくらいの音量差がちょうどいいんではないか。
と考えると、かなりライブ向きなアンプであると言える。


■2.サウンドセッティング
基本リードchを使用することが多い。
ブースト無しで使えない音かというとそんなことはないが、
ブーストをかけた際の深みのある太いディストーションサウンドが気に入っている。
以下はリードch+ブーストのセッティングについて記載する。

・トーンコントロール
このアンプのトーンコントロールの勘所は概ね以下と捉えている。

Treble:音の抜けと鋭さ
Middle:音の明るさと食いつきと圧
Bass:音の太さと重さ

セッティングはトーンおよびゲインを全部12時に合わせてからスタートするが、
その時点の音は概ねダークな印象なので明るさを増すためにMiddleを上げる。
明るさと圧(音が前に出てくる感じ)が上がっていくので適当なところで止める。
そうすると音に重さが欲しくなるのでBassを上げていく。
重さと太さのバランスでBassの位置を決め、Trebleで音のヌケ具合を決める。
フロントピックアップのリードサウンドが抜けるところでTrebleの位置を決め、
あとは音の食いつき感や鋭さなどを鑑みてそれぞれ微調整をする程度でほぼ終了。

で、下げ上げすることで一番 音色に違いが出るのは Treble だと思う。
上げ過ぎるとチャリチャリペラペラな音になってしまうし、
下げ過ぎるとモコっとした音でキレが悪くなる。
他のトーンの効き具合も変わってくるように思える。
なのでMiddleやBassを先に決めてしまい、
Trebleの位置は音全体を踏まえながら決めていくことになる。
セッティングはどの楽器でも大体以下に落ち着くようになった。

Treble:11~1時
Middle:3時
Bass:5時(ほぼフルアップ)

・ゲイン
指向する音楽やピックアップのゲインにもよるが、
ディストーションペダルは不要と思えるほどアンプが歪んでくれる。
ペダルは通さずに音が作れるならそれに越したことはないのでありがたい。
なので演奏する曲に応じてゲインのセッティングは変わるだろうが、
概ね11時~3時の間のどこかに落ち着く。
購入して今まで3時以上の位置まで上げることは無かった。
とは言えそれ以上の位置にしても音が潰れていくだけで歪が増すという感覚は無い。
ピックアップがシングルコイルの場合上げ気味、
ハムバッカーの場合下げ気味になる傾向にある。

この設定をリードch+ブーストで出し、リズムバッキングはブーストOFF、
クリーンは別チャンネルに切替することで出している。
尚、クリーンchはゲインとボリュームが別のため、
それぞれサウンド傾向に合わせて後からセッティングする。
ゲインを上げ気味にすると太い音が得られるため、
許される限りゲインは上げる方向でセッティングする。


■3.使い勝手
・コントロール
Treble Middle Bass Gain Master 以外ナシ!というシンプルな構成がとてもイイ。
その上で事実上3chアンプ的な使い方が出来るのがありがたい。
chごとに細かくセッティングしてスイッチでパチパチ切り替えたいとかはムリだが、
あるchで決めたトーンセッティングで別chに切り替えた場合でも、
まぁいいんじゃないというレベルで受け入れられる音だったりする。

・サイズ
このサイズだから持ち歩こうという気になる。
公共交通機関での移動でも持っていくか?と問われればNOだが、
行った先に使えるアンプが確実に無く、でもスピーカーキャビネットは確実にある、
と分かっていれば確実に持っていく。このアンプがあればエフェクト要らないし。

・チューブセーフティコントロール(TSC)
早い話が自動バイアス調整機構なのだが、
これがあるおかげで真空管を自分で換えようという気になった。
そうでなければ楽器屋に持ち込んで対応してもらっていただろう。
ただし真空管交換作業は専門家が行うべきもので、
自分で交換する場合は諸々の結果を自己責任で対処する必要がある。

・アッテネーター
1W 5W 18W と出力を切り替えられる仕組みがあり、これがありがたい。
1W でマスターボリュームを絞り気味にしてやれば自宅でも使用出来る。
パワーアンプのサチュレーションが欲しい場合は 5W にしてマスターをフルアップ。
18W での音量の少なさを危惧する話をネットで見かけるが、自分は何の心配もない。
0W でライン出力できる仕掛けもあるのだが使ったことがない。宅録とかしないんで。

・センドリターン
同じクラスのアンプでもセンドリターンが無いものもあるようなので地味にありがたい。
どうしてもアンプで歪を得たいためディレイやら空間系エフェクトはセンドリターンが必須。
T.C.ElectronicのRPT-1(コンパクトなのに入力レベルが切り替えられる!)を通している。


■4.真空管
・交換すべきか
絶対いいものに換えるべき。音が激変する。
真空管換えただけで音が変わるのかと疑っていた自分がアホに思える。
自分はプリもパワーも同時に換えたが、
こんなに違うのかと思うほど音がいい方向に変わった。
純正で搭載されている真空管はチャイナ管と呼ばれる安いもので、
特にディストーションさせた時の音にムラがあり篭ったような音色だった。
このアンプには自動バイアス調整機構が付いており、
面倒なバイアス調整が不要のため、
真空管交換はタマの差し替えだけで済む。やらない手はない。
(ただしアンプが壊れたり自分が感電したりといった結果には自己責任)
自分はプリ管を Svetlana の 12AX7 パワー管を JJ Electronic に交換。

・ヘタるとどうなるか
自宅で2時間程度週末5時間程度週2~3回という自分のような使い方をすると、
プリ管のヘタりなのかパワー管のヘタりなのかは分からないが、
恐らく真空管は1年くらいでヘタりはじめ、以下の症状が目立つようになる。

音の芯がぼやける
線が細いチリチリとしたディストーションになる
出音のスピードが遅くなり弦に対する反応が鈍くなる
音が弾んだようにならず滲んでゆくような印象を受ける
音の表現力が落ち情報量が少なくなる

人によっては真空管の寿命は何千時間もあるから換える必要は無いと言うが、
機械としては正しく稼働しているのだろうが楽器としては果たしてどうだろうか。
人によってはヘタりきった真空管の音が好きだと言うが、
自分はあまりいい状態とは思えず、このサウンドで弾き続けたくはない。
現在これらの症状を確認しているので、
とりあえずプリ管の左右を入替えて騙し騙し使っている。
(リードchばかり使っているのでクリーンch用プリ管はまだヘタってないという読み)


■5.Tube Meister 36 が欲しいか
Tube Meister 18 との違いは

リバーブが付いている
3ch独立のゲインマスターが付いている
クリーンとクランチリードでEQセッティングが分かれている
使用している真空管の数がほぼ倍
横方向に大きい

といったところ。
また、ワット数が上がることで音量やトーンコントロールの幅にも余裕がありそうだ。
弾いてみたいかと言われればアンプ好きとしては当然弾いてみたいが、
欲しいかと言われると、要らないかなぁと。
横方向に大きいというネガはデカイし、
使い倒すと 18 で不満が無くなるのだ。
(使ってみれば 36 なりの良さがあるだろうとは十分予測できる)

このクラスのオールチューブアンプは他にも魅力ある製品が多いが、
もうしばらくこのアンプと付き合ってみようと思う。