2006/02/18

BONAの調べ

この時間になっても興奮冷めやらない。
JAZZ ではない。ワールドミュージックでもない。
不思議な魅力を持つメロディ、
丸みを帯びた和音の奥行き感、
そして心地よいグルーヴ、
「癒し」という陳腐な言葉ではふさわしくない。
荘厳でもあり、幻想的でもあるあの空気感。
それらを何と言えば良いのか、端的な言葉が見つからない。
そして彼らのプレイには「やさしさ」が存在していた。
そう、それは「やさしさ」という言葉が最もふさわしいのではないか。

本日、正確には先日だが、リチャード・ボナの来日公演を見て来た。
六本木から表参道に場所を移したブルーノート東京への道程はとても肌寒く、
21:30 開始のステージへと向かう足の動きはとても鈍かったと感じている。
正直に言うとそれほどモチベーションは高くなかった。
彼のサウンドに狂っていたのは一昨年ほど前の事。
ここ最近はプレーヤーに彼の作品を乗せる機会も減っていた。
だがスタートしてみるとどうだろう。
正味2時間のライブはあっと言う間に終わってしまった。

どこまでもスムーズに暖かく流れて行くボナのベースライン。
時折見せる居合い抜きの様な鋭さを放つスラッピング。
スゴ腕のミュージシャンがそのサウンドに支えられ各々のプレイをぶつけ合う。
それらはまるで、地上のありとあらゆる音楽が融合しあっているかの様。
しかもそれが全く不自然さやイヤミを感じさせない。とても自然な必然に思える。
恐らくボナの中に取り込まれた音楽が彼の解釈を通じて滲み出ているからなのだろう。
ミュージシャンとして一番良い、あるべき姿だ。恐ろしい程の力量と言わざるを得ない。
さらに信じられない事に、彼はそのベースを歌いながら弾いているのだ。

自分は音楽をジャンル分けする事をバカげた発想だと感じる方なのだが、
今日ほどそれを強く感じた事は無い。良いものは良い。それだけだ。

近年稀に見る最高のステージだった。忘れられないだろう。
あのステージで自分は確実にアフリカの風を感じていた。


追伸:
ちょうどステージ袖下の席で見ていた自分は、
演奏を終えたメンバーがステージから降りて来る際、
身の程をわきまえずハイタッチをしようと思わず手を上げてしまった。
だが、彼らは自分の手にハイタッチをする事無くギュッと握り返してくれた。
プレイを終えたボナの右手は、大きかった。とても暖かかった。

0 Comments:

コメントを投稿

<< Home