2007/11/10

ドライビングの極意

前回の投稿では変に誤解を招いてしまいそうな記載をしてしまった。
まるでスパルタチックな指導員が受講生をビシバシ鍛えるようなイメージだ。
そんな事は一切無く、物凄く丁寧に且つわかりやすく親切に教えてもらえた。

ドライバートレーニングは富士スピードウェイショートコースで行われた。
講師はレーシングドライバー経験者であり、横暴なそぶりなど一切存在しない。
スタッフも教育が行き届いているようでサービスも丁寧だ。
フリードリンクが至る所に用意され、喫煙も車外の指定場所ならいつでも可能だ。
終始リラックス出来る雰囲気の中、最高の受講環境が用意されていた。

あの投稿で記載した内容は自分の心に戒めとして響かせた「第三の声」のようなもの。
ドライバートレーニングは自分にとって非常に有意義なものであった事は間違いない。
そんな書き方をしてしまった己の心の弱さと文章の拙さを反省し、
受講して得たスポーツドライビングの極意を備忘録としてここに記載する。


ドライビングポジションについて:
運転はリラックスした状態で行うべきだが「リラックス」と「楽」は全く違うもの。
必ず腰を座面に密着させる事。腰が支えられないと疲れが溜り痛みも発生する。
人間は連続するストレスに対しては時間を追うに従って慣れが生じる。
よって座り始めは窮屈に感じていても長く続くと気にならなくなる。
左フットレスト(マニュアルならクラッチ)をしっかり踏んで膝下を意識し、
圧迫感を感じればシート前後位置は後ろ過ぎ、スカスカなら前過ぎ。
背もたれの角度はハンドルの一番上を持って決める。
もし肩甲骨が背もたれから離れる様なら角度は寝すぎている。
ハンドルを操作した際に肘が伸び切ってしまう事がある場合はポジションを再考せよ。
人間の腕は肘が少し曲がっている方が楽に動作させられる。
無意識にバイバイをやってみるとわかる。肘を伸ばしてバイバイする人はいない。

急制動について:
急ブレーキを踏み続けている間でも上半身はリラックスしていなければいけない。
上半身に力が入っているとブレーキ以外の操作がスムーズに出来なくなる。
ABS が装備されていればブレーキを踏んで制動力をかけ続けながらも曲がる事が可能。
よってクルマが停止するまで踏み続けなければ ABS の恩恵を出し切る事は出来ない。
ABS の性能はかなり向上しているが交通事故は減少していない事実を忘れてはいけない。

ハンドルについて:
ハンドルは持つもの。握ってはいけない。握れば手首の動きが悪くなる。
左手なら9時から時計回りに4時まで、
右手なら反時計回りに3時から8時までをワンアクションと考える。
峠道のタイトな低速ヘアピンカーブを除けば、
そのワンアクションで日本の道路ほぼ全てのカーブを曲がる事が出来る。
「どれだけのスピードでどれだけ切ればどういうラインを通るか」を常に意識し、
そのワンアクションの範囲内での上記のライン感覚について精度を上げよ。

コーナリングについて:
コーナリング中に加減速を行わなず(パーシャル)、
ハンドルの切り量を変えなければ安定したコーナリングを行う事が出来る。
よってライン感覚の精度が高ければそれだけ安定して速いコーナリングが出来る。
コーナリング中にハンドルの切り量を変えず加速を行うとラインはふくらむ。
これをアンダーステアという。「肝心な所でアンダー出しちゃった」というアレである。
その状態でさらにハンドルを切り込めば確かに曲がる事は曲がる。
だがある速度域からハンドルの応答がおかしくなる。
その時フロントタイヤのキャパシティは進む力に偏っており、
曲がる力にキャパシティを割く事が出来ない状態でいる。
そこからさらに曲げようとハンドルを切ってしまうと、
フロントタイヤの曲がる力は一定の能力を保つ事無く逆に減ってゆく。
DSC という安全装置はこの挙動を感知して介入して来る。

テールブレイク時の対応について:
カウンターステアは当てようとして当てるものではない。
進行したい方向にクルマを向けるという意識でハンドルを切ればで自然と当たるもの。
接触する事を気にしてガードレールを見てはいけない。
ドライバーは自分の視線を向けた方向にクルマを向ける動作を無意識に行う。
よってカウンターステアを当てている間も視線は常に進行したい方向を見続けよ。

スムーズドライブについて:
安全な運転=「急」のつく操作を行わない運転=スムーズな運転と考えよ。
スムーズな運転(スムーズドライブ)はスムーズな操作から生まれる。
スムーズな操作とは「同乗者が操作し始めともどしの挙動が分からない」操作と考えよ。
操作し始めだけをスムーズにするだけでは不十分。
操作を終える時に「もどす」操作を行うはず。
その「もどす」操作も意識的にスムーズに行う事でスムーズドライブは完成する。
スムーズ=低速走行ではない。スムーズでもスポーティな走りは可能。
スムーズに操作してクルマの 100% の性能を出す事がスポーツドライブと考えよ。

スムーズな操作について:
ブレーキ、ハンドル、アクセルについて始めはまろやかな入力を心がける事。
そして必要な量だけ徐々に操作の入力を行えば全てがスムーズに操作可能。
クルマは入力量を急に与えてしまうと各パーツに反発力を生じる。
この反発力が挙動を不安定にさせる要因となり、
負の方向の力が加わる事で実は遅くなる要因ともなる。
(アクセルを素早く踏み込むと実はクルマが遅くなる等)
しかしスムーズな入力を行えば同じ入力量でもクルマは意外なほど粘ってくれる。
この各パーツやクルマ自身の「粘り」を常に感じ、意識する事。
蛇足だがここで言う入力量とは以下を指す。

・ブレーキの踏み込み量
・ハンドルの切り量
・アクセルの踏み込み量

スムーズアクセルの練習法:
スムーズなアクセル操作の練習はギヤをセカンドに入れっぱなしでしばらく走ると良い。
その状態ではアクセルをスムーズに踏み込み、スムーズにもどさなければ挙動が安定しない。
D レンジにシフトした状態でもセカンド固定時の操作を意識的に行う。
そうすればスムーズなアクセル操作は確実に出来ているはず。
コーナー直前ではなく手前からアクセルをジワッともどす事。
ドライバーはアクセルをもどした時点で加速が終了すると感じるものだが、
ジワッと徐々にもどすと加速は弱まるが終了はしていない。
実は自分が感じている以上に加速しており、
さらにその加速はコーナー直前まで続いていたりする。
マニュアルでも一段上のギヤで操作すれば基本は同じ。

早めにアクセルをもどす理由:
加速中は視界に写る風景も当然加速度に応じて動的に変化してゆく。
その加速感がドライバーの体感速度を麻痺させ、実速度以上に速いと感じさせる。
つまりその状態では体感速度と実速度が実は一致していない。
よってコーナリング手前のブレーキを無意識に多めに踏んでしまう。
加速が弱まればスピードが一定に近づくため視界の動的変化が弱まり、
体感速度と実速度が一致して来る。
そこで必要なだけのブレーキ量を正確に判断する事が出来るようになり、
適切なコーナリングスピードで曲がる事が出来る。
それはコーナリング直前まで加速し続けた場合より明らかに速いはず。

コーナー出口のアクセルオンのタイミングについて:
まず視線を常に出来る限り遠くに持って行く事。
コーナーを曲がっている間は当然曲がるためにハンドルを切っており、
そのハンドル位置は一定しているはず(ハンドルピーク)。
そのハンドル位置がコーナー立ち上がりのために変わり始めた(もどり始めた)ら、
スムーズにアクセルを踏み始めて加速する。
ハンドルピークが変わるタイミングがアクセルオンのタイミングと考えよ。
アクセルを踏み込む度合いをハンドルを戻す量とシンクロさせられれば尚良し。

視線について:
視線は自分が思っている以上に重要なので意識し過ぎかと思うくらい意識する事。
クルマは視線の方向に行くものと考え、出来るだけ遠くに視線を向けよ。
そうする事で「道のどこをどの様に通っていくか」というラインのプランが早くに出来上がり、
目先の判断を直前に処理する必要が無くなるためドライビングに余裕が生まれる。
余裕が生まれればそれだけ速度を上げることが出来るため速くなる。
速度を上げると動体視力との兼ね合いでしっかりと認識できる視界が狭くなる。
視界が狭まると視線を遠くに置く事が難しくなって来る。
よって速度のリミットは視線を遠くに持って行けないと思った所と考えれば良い。


外の空気はキリッと引き締まっている。
紅葉の色づきも程良く進んでいる事だろう。
では、蕎麦を食べに行くとしよう。戸隠まで。

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